新卒正社員
ある日突然、専門学校から電話がかかってきた。
うちに就職を希望している子がいるんだけど、新卒採用の予定はありませんか?とのこと。
求人は出していない。
婚礼の音響をやりたいと言っているらしかった。
ざっと計算して、婚礼の仕事だけで社員を一人雇うことはできそうだった。
私とスーとあとは外注さんで回している婚礼の仕事だけど、外注さんは不安定。絶対に請負ってくれるという保障はないから。もう一人社内に戦力がいたら、仕事を受けられる件数も増えるし、やっていける。
会うだけ会ってみて、よければ採用すればいいし、仕事の説明をしたら向こうから辞退することもあるだろうし、ということで面接した。
彼女は電車とバスを乗り継いで事務所までやってきた。
すごく控えめ、地味だけど、真面目そうだった。言葉数は少なめ。
それでも、求人出してもいないのに、自分で調べて就職を希望したんだからガッツがあると思った。
面接の後、新卒を雇うことに対して不安があったスーは知人の音響の会社に彼女を紹介して、在学期間中はその音響会社でインターンをしていた。いよいよ内定の返事をしないと、という時には弊社の条件を伝えて、どちらに行くかはあなたが決めてください。というスタンスに。
結果、彼女はうちを選んで、2020年の4月1日から初の新卒新入社員として入社した。
世間は新型コロナウィルスの影響で、内定が決まっていても雇い止めがあったり、私たちの会社もイベントの仕事が全キャンセル、婚礼も9割キャンセル、婚礼関連のギフトのEC販売も9割キャンセルと大打撃で、
正直こんな状況下で正社員を雇うことに不安しかなかったけど、コロナが流行って本格的にイベントがキャンセルになり出したのは2月。このタイミングで雇い止めにする度胸もなく...
入社後、肝心の婚礼の仕事がどんどんキャンセルになっていった。
年末、EC担当のパートさんが出産のため退職した。
彼女には、本望じゃなかっただろうけど、
EC販売の仕事をお願いした。
彼女の仕事の半分はECになってしまった。
婚礼の仕事は上向くことはなく、減る一方だった。
一日中パソコンに向かって作業するのはあまり得意ではないと言っていた彼女。
それでも、給料を払うためには、嫌な仕事でもやってもらうしかない。
4月から年末まで、半分くらい休業として休んでもらっていた。(給料は満額支払い)
だから仕事を教える時間も通常より少なかったと思う。
それにしても、入社して半年経っても「指示待ち」というか...自分の頭で考えて行動してくれない。
年明けのお正月にイベントの仕事があった。
ショッピングセンターで子ども向けの工作のワークショップ。
ショッピングセンターから依頼を受けて、企画して、お金を払ってもらって、やるのが私たちの仕事。
企画をいくつか出す中で決めるのは先方だし、集客が出来てもできなくても払ってもらうお金は一緒。
なんだけど、彼女に任せた現場では、予定数50に対して売れた(参加してくれた)のが15くらいで、圧倒的に少なかった。
後でクライアントからクレームがきた。
コロナの影響で店の来客自体が少なかったらしいのだけど、やっぱりパッケージでお金払ってもらってるからには全数はけさせるべく声かけたりPRの努力をするべきと思う。
私たちは当たり前のようにそう思ってたけど、多分彼女は「この日にこの現場に行って、この仕事してね」と言われたから行ってやっただけで、それ以上でもそれ以下でもなかったんだろう。
そんなん、バイトじゃん。って思う。
何のためにクライアントがお金を払って仕事を依頼しているか考えれば、自分がどうすべきかなんか誰かに言われなくてもわかるはずと私たちは考えちゃう。
Iくんとスーは散々愚痴っていたけど、本人に言わず影で言うばっかりだったから私が伝えた。
この辺りから、「言わなきゃわかんないよね。」と私なりに反省して、注意するべきことは細かくても言うようにした。
彼女もいつまでも一年生じゃない。
会社としても戦力になってもらわないと困る。
安月給でも、パートさんの倍はもらってる。
責任の重さは違うはずだ。
3人目のメンバー
2年前、前職のイベント会社の同期だったIくんを私たちの会社に誘った。
彼は私たちが前職の会社を辞めた後もしばらく残っていて、社長から小言を言われながらも営業を頑張って、取引先を増やしていた。
彼が前の会社で小言を言われ続けたのには訳があって、彼は入社したその初日から「帰りたい」「もう辞めたい」と口ぐせのように言うタイプ。やる気がないわけではないし、ヘタレなわけでもないけれど、「楽したい」という気持ちが先行してしまうところがあって、最初から「ダメなやつ」のレッテルを貼られていた。
責任感も今ひとつ。とにかくオフが大事で、地元の友達と夜中までダーツして遊んでるような人でした。
ダメな奴っぽいんだけど、話してみると「すごくいいヤツ」で、憎めない。そのキャラのお陰で取引先からも可愛がられていたように思うし、仕事も取れたんだと思う。
私は自分の性格が割と「クソ真面目」な方なので、仕事仲間としての彼はあまり評価していなかった。婚礼の仕事でミスされたこともあって、私が代わりに謝罪したり、嫌な思いもしてる。
でもスー(社長)が「うちにとって初めての社員の人選はとても大事だよ。Iくんを誘おう」と言った時、反対はしなかった。
前職ではあんな感じだったけど、彼は前職を辞めた後、真面目に家電量販店で働いていた。その後携帯電話の販売に引き抜きされて、販売数全国1位を取った時もあると聞いていた。
いわゆる、やればできる子タイプなんだと勝手に思って。
それに、仕事の能力よりも、私たちが信頼して仕事を任せられる人かどうかが重要だと思ったからね。
1年目は給料分、稼げなくても仕方がないと最初からスーと話をしていたらしい。
想定通り、1年目は大して仕事も取れず給料分すら稼げなかった。
2年目は2020年、コロナでイベントの仕事が激減。仕方がないけど雇用調整給付金をもらい、借り入れをマックス額までして、なんとか凌いだ。赤字決算でした。
顧客を知る
最近、製造業のホームページ制作の仕事によく携わっている。
製造業と一言で言っても、本当に多種多様で、
実際に自分たちの生活に直結していない「モノ」を作っているところが多く。
業務内容を聞いても、正直最初はちんぷんかんぷんなのです。
私がいつも最初にやっているのは、
その業界について徹底的に調べること。
検索しまくります。
その業界のこと、専門用語について少しは理解できるようになるというのと同時に、
どういうワードが検索されているか、どのようなワードだと希望通りの結果を得られるか、またはニッチなのか。ということがわかります。
顧客を知ると、自分の世界も広がる。
それまで知らなかった色々な仕事に出会えるのはとても楽しい。
会社の形態と役員報酬
起業するにあたって、事業形態は三択だった。
・個人事業
・株式会社
私はこの時「何をやるか」ということより
「誰とやるか」ということが大事だと考えてた。(今でもそれは大事なことだと思ってる)
だから、フリーランスとか商店っていうんじゃなくてちゃんと会社にして人を雇って
自分が最高と思えるチームでいい仕事をするんだ。って考えてたから、個人事業っていう選択肢はなかった。
今は有限会社っていうのがないから、税制的には合同会社がそれに一番近くて、それもありかなと思った。
会社設立時の費用も、株式会社では登録免許税と定款認証の費用で24万円かかるのに対して、合同会社は6万円で済む。定款認証はそもそも必要ない。
だけど相方の意見は違った。
「ここは田舎だから、合同会社や合資会社ではだめだ。なんだそれ?って絶対になる。会社をやるなら株式にしよう」
私もそれに妙に納得して株式会社にした。
資本金は50万ずつ出し合って100万でスタートしようと言っていたのだけど、
相方が全然貯金がなくて、同額じゃないと嫌だったので25万ずつで50万にした。
私は会社設立時の登録免許税等は資本金とは別に用意しないといけないと思っていたんだけど、これは資本金の中から出してもいいということを後で知った。
領収証的なものがあればいいらしい。
25万円ずつといっても、相方は車とmacbookを現物出資したので、スタート時の現金は30万円。
設立後、役員報酬を決めなきゃいけないんだけど、
資本金も少なく、仕事がうまくいくかもわからない自分たちは役員報酬を社会保障が受けられる最低ラインに設定した。(これは大間違いだった。多分)
2015年の設立時の社会保障が受けられる最低報酬は57000円だったと思う。
この当時、私たちはお互いに業務委託の仕事を請け負っていてある程度の収入があったので、会社からもらうお金はそれで十分だった。
役員報酬は一年間続けないといけない。
創業から4ヵ月後、業務委託の仕事が終わって収入が減り、2人合わせて13万弱の生活は本当にキツかった。
アパートの家賃は52000円。
貯金を切り崩しながら生活してたけど、アホなことに妊娠発覚。
結婚して実家で生活させてもらうことに...
わたしの基本スペック
31歳女、バツイチ。二人の子供を前の家庭に置いてきてる。
仕事ばっかりのひどい母だった。
今の旦那と前の職場(イベント業)で出会って、再婚。
生後5ヶ月の赤ちゃんと義両親と生活してる。
10代の頃、趣味でホームページを作ってて、知人のお店のとかも作った。
20代前半ちょっとだけWEB関係の仕事をしていてその後イベント会社に入った。
イベント会社では主に結婚式関連の仕事をやってた。
あとイベントのチラシを作ったり。
どんな仕事でも「利益率50%」を掲げる見た目地方マフィアの社長に嫌気が差し
仕事ばっかりで家庭を顧みない自分にも嫌気が差し
クレームが多くてうんざりするブライダル業界に嫌気が差し
意気揚々と退職。
その時まだ結婚前だったけど、今の旦那と「起業しようね(キラキラ)!!」と口約束。
旦那はすぐに仕事を辞められるわけでもなく、私は一年間フリーター。
私の退職から1年後、旦那が退職した。
彼が2社顧客を引っ張ってきて、バタバタと起業。
今現在、一期決算を終え、2年目に突入したけど
今年の冬が山場なんじゃないかと戦々恐々しているところです。